手指に欠損障害または機能障害が残存した場合には、下記の後遺障害等級が認定されます。
なお,手の指は、日常的に、「親指」、「人差し指」、「中指」、「薬指」、「小指」と言いますが、後遺障害の認定基準では、手の指は順に、「母指」、「示指」、「中指」、「環指」、「小指」と呼びます(つまり「中指」と「小指」以外は、日常的に使う呼称とは異なります)。
手指が欠損した場合、欠損した指の種類及び本数等によって、以下の後遺障害等級が認定されます。
後遺障害 | 等級 |
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両手の手指の全部を失ったもの | 3級5号 |
1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの | 6級8号 |
1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの | 7級6号 |
1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの | 8級3号 |
1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの | 9級12号 |
1手の示指、中指又は環指を失ったもの | 11級8号 |
1手の小指を失ったもの | 12級9号 |
1手の母指の指骨の一部を失ったもの | 13級7号 |
1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの | 14級6号 |
「手指を失ったものとは、母指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失ったもの」とされており、具体的には、次の場合がこれに該当します。
「指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含む)ことがエックス線写真等により確認できるものをいう(後記の「機能障害」の2.の(1)に該当するものを除く。)。
母指延長術(血管、神経付遊離植皮を伴う造母指術を含む)を行った場合にあっては、術後の母指は切断時に比べて延長されることとなるが、その後遺障害については、原則として「1手の母指を失ったもの」(9級12号)として取り扱うこととされています。 ただし、術後の母指の延長の程度が、健側母指と比べて明らかに指節間関節を超えていると認められる場合には、後記の機能障害における「1手の母指の用を廃したもの」(10級7号)とすることとされています。
手指(または足指)の移植により母指の機能再建化手術を行った場合にあっては、術後の母指に残存する機能障害と当該手術により失うこととなった手(又は足)の指の欠損障害とを同時に生じた障害とみなし、準用又は併合の方法により障害等級を認定することとされています。
手指に可動域制限が残存した場合には、機能障害が残存した手指の種類等によって、下記のとおりの後遺障害等級が認定されます。
なお、手指の後遺障害の具体的な測定方法については関節の機能障害の評価方法をご参照下さい。
後遺障害 | 等級 |
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両手の手指の全部の用を廃したもの | 4級6号 |
1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの | 7級7号 |
1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの | 8級4号 |
1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの | 9級13号 |
1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの | 10級7号 |
1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの | 12級10号 |
1手の小指の用を廃したもの | 13級6号 |
1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの | 14級7号 |
「手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指骨関節若しくは近位指節間関節(母指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すもの」とされており、具体的には、次の場合がこれに該当します。
母指については、橈骨外転又は掌側外転のいずれかが健側の1/2以下に制限されているものも、「著しい運動障害を残すもの」に準じて取り扱うこととされています。
手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したものも、「手指の用を廃したもの」に準じて取り扱うこととされています。
このことは、医学的に当該部位を支配する感覚神経が断裂し得ると判断される外傷を負った事実を確認するとともに、筋電計を用いた感覚神経伝道速度検査を行い、感覚神経活動電位(SNAP)が検出されないことを確認することによって認定することとされています。
※ 感覚の完全脱失とは、表在感覚のみならず深部感覚をも消失したものをいいます。表在感覚のみならず、深部感覚をも完全に脱失するのは、外傷により感覚神経が断裂した場合に限られます。
足指の移植により母指の機能再建化手術を行った場合については、上記の欠損障害の2.の(4)母指の機能再建化手術を行った場合と同様の取り扱いとなります。
骨折部にキュンチャー(※骨折時等に骨折部を固定するために使用される骨髄内釘のことです。)を装着し、あるいは金属釘を用いたため、それが機能障害の原因となる場合は、当該キュンチャー等の除去を待って等級の認定を行うこと。
なお、当該キュンチャー等が機能障害の原因とならない場合は、創面治ゆをもって等級の認定を行うこと。
また、廃用性の機能障害(たとえば、ギプスによって患部を固定しているために、治ゆ後に関節に機能障害を存するもの)については、将来における障害の程度の軽減を考慮して等級の認定を行うこと。