死亡逸失利益とは、死亡した被害者が仮に生きていれば受け取ることが出来たはずの収入分のことです。
考え方としては、後遺障害逸失利益の場合と同様であり、後遺障害により労働能力が100パーセント失われた場合の逸失利益が死亡逸失利益です。
もっとも、被害者は死亡していますので、生活費はかかりません。そのため、死亡逸失利益から生活費を控除する必要があり、この点が後遺障害逸失利益とは異なります。
死亡逸失利益の算定式は以下のとおりです。
基礎収入の考え方は、休業損害や後遺障害逸失利益における基礎収入とほぼ同様に考えて大丈夫です。
高齢者の場合には、年金で生活している方も多いと思いますが、年金額が基礎収入になるのでしょうか。 この点、年金の種類により、基礎収入になるかどうかが異なってきます。
最高裁によれは、遺族厚生年金の性質は、家族の生活保障のためのものではなく、あくまでも死亡した被害者本人のための年金であり、一身専属性が強いため、基礎収入としては認められません。
その他の公的年金である老齢年金や障害年金等については、最高裁は、遺族の生活保障的意味も加味して、基礎収入として認めています。
被害者が死亡すると、当然ですが、死亡後は生活費がかからなくなります。死亡逸失利益は、上記のとおり、死亡した被害者が仮に生きていれば受け取ることが出来たはずの収入分のことですが、生きていれば要したであろう生活費も控除して算出する必要があります。
このように、被害者の死亡により、将来の収入から支払われるはずであった被害者の生活費の支払いを免れるため、将来の生活費相当分を控除する一定の割合のことを生活費控除率といいます。
生活費控除率は、被害者本人がどのような立場にあったかによって多少異なります。具体的な目安としては、以下のとおりです。
一家の支柱 (被扶養者1人の場合) |
40% |
---|---|
一家の支柱 (被扶養者2人以上の場合) |
30% |
女性 (主婦、独身、幼児等を含む) |
30% |
男性 (独身、幼児等を含む) |
50% |
中間利息の控除に関してライプニッツ係数を使用すること、及びライプニッツ係数の算出するための就労可能年数は、原則として死亡時から67歳までの期間であること等については、後遺障害逸失利益の場合と同様です。